『小栗日記』や遣米使節の随行日記といった一次資料は、いま多くが活字になっているか、デジタルで公開されています。図書館へ行かなくても、自宅からかなりのところまで調べられます。
ここでは、原典が何に入っているか、どこで見られるかを、巻号まで含めて書いておきます。
一次資料
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小栗忠順『小栗日記』
本多夏彦 編/群馬県史料集 第七巻/群馬県文化事業振興会。小栗自身の自筆日記二冊と家計簿四冊を翻刻した、この人物の基本史料です。日記は慶応三年正月から十二月晦日までの三百五十四日分(空白の日なし)と、慶応四年正月元日から閏四月二日までの二冊。後者の最後の記事は、真彦を三ノ倉へ遣わし、又一を高崎へ出すという一条で、そこで擱筆しています。
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同・家計簿四冊(同巻所収)
『量入制出簿』(嘉永三年正月〜安政二年五月)、『勝手方勘定帳』(安政五年正月〜安政六年十二月)、『勘定帳』(安政七年正月〜文久元年十二月)、『出納』(文久二年正月〜文久三年十二月)。二千五百石の旗本の収支が一文単位で追えます。安政六年末に大きな黒字が出るのは十二月に「亜米利加行手当金千両」が渡されたため、文久元年の黒字はロシア艦との談判で対馬へ出張した手当が入ったためです。
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同巻の併載史料
見落とされがちですが、第七巻には「村々役人願出取次留」「戊辰閏四月 後藤八郎右衛門手記」のほか、遣米使節に随行した佐藤藤七記述・柳川兼三郎筆録の「航海日記(抄)」二種と、「小栗上野介の為替所取立建議」が入っています。権田村側の記録と使節側の記録を、この一冊でまとめて読めます。
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『萬延元年第一遣米使節日記』/『万延元年遣米使節史料集成』(全七巻)
前者は日米協会・1918年。刊行が古いので国立国会図書館デジタルコレクションで全文が読めます。後者は日米修好通商百年記念行事運営会 編、風間書房・1961年。日程の確定にはこちらの年表が使われます。
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玉蟲左太夫『航米日録』/木村鉄太『航米記』/佐野鼎『訪米日記』
使節に随行した人々の日記。木村鉄太は小栗の従者で、ポーハタン号の乗組員の職位と給料まで一覧にした人です。同じ旅を別の目で見た記録が並ぶので、突き合わせると解像度が上がります。
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栗本鋤雲『匏庵遺稿』『匏庵十種』
造船所建設をともに動かした盟友の遺稿で、嗣子の秀次郎が編みました。「横須賀経営の事」の章が、製鉄所がどう決まりどう着工したかの一次証言です。研究書が「匏菴遺稿一〇八頁」のように頁で引くのはこの本。東京大学出版会から1975年に復刻されています。
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田辺太一『幕末外交談』/福地源一郎『幕府衰亡論』『幕末政治家』
いずれも平凡社東洋文庫。とくに『幕末政治家』は、「余は親く小栗に隷属したる」と書く福地自身の目撃談で、小栗の財政運営を論じるときの定番の典拠です。
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『平野弥十郎幕末・維新日記』
北海道大学図書刊行会/2000年。築地ホテル館の話がどう持ちかけられたかが、請負側の日記として残っています。
『小栗日記』はどこから出てきたか
原本の伝来を知っておくと、この史料の性格が分かります。小栗の処刑後、東山道巡察使・大音龍太郎の命で権田村に入り、小栗家の財産処分にあたったのが渋川宿の問屋・後藤八郎右衛門でした。閏四月二十五日まで処分を続け、売れない文書やフランス関係の書簡の多くは焼却されます。八郎右衛門はその中から日記と会計帳を懐に入れて持ち帰りました。
それが渋川の後藤家の箪笥の底で八十年余り眠り、昭和二十七年九月、県文化財専門委員の本多夏彦氏が常例の史料拝見で訪問した際に発見されます。群馬県は昭和三十一年にこれを県重要文化財に指定し、史料集第七巻に収めました。巻頭の「調査書」は、指定にあたって本多氏が書いた報告書そのもので、原本の寸法・紙数・表紙の状態まで記録されています。
自分で調べる ― デジタルアーカイブの使い方
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一、国立国会図書館デジタルコレクション(dl.ndl.go.jp)
明治・大正の刊行物が全文検索できます。人名で検索して職員録・紳士録・官報に当たると、その人がいつどこに勤めていたかが分かることがあります。個人送信サービスに登録すると、館内限定だった資料の多くが自宅から読めます。 -
二、国立国会図書館サーチ(ndlsearch.ndl.go.jp)
全国の図書館の所蔵をまとめて探せます。『群馬県史料集』や『倉渕村誌』のような地方刊行物は流通していないので、まずここで所蔵館を確かめ、近所の図書館から取り寄せるのが早道です。 -
三、国立公文書館デジタルアーカイブ(digital.archives.go.jp)
明治政府の公文書。太政官の布告や、官員の履歴に当たるときに。 -
四、宮内公文書館(書陵部所蔵資料目録・画像公開システム)
宮内省・宮内府・宮内庁の文書。宮内省に勤めた人物の進退関係の記録が残っており、生年月・族籍・原籍まで分かることがあります。閲覧は事前予約制です。 -
五、群馬県立文書館(archives.pref.gunma.jp)
権田村・倉渕村関係の文書、明治期の寺院明細帳など。目録検索で当たりをつけてから、レファレンスに相談するのが早道です。 -
六、図書館のレファレンス
「この人物を追いたい」「この年のこの事項を確かめたい」と具体的に書いて相談すると、自分では思いつかない資料を教えてもらえます。無料で、いちばん効きます。
典拠:本多夏彦編『小栗日記』群馬県史料集第七巻、群馬県文化事業振興会(「小栗上野介日記・家計簿調査書」および同書あとがき)/坂本藤良『小栗上野介の生涯』講談社、1987年/阿部道山『海軍の先駆者小栗上野介正伝』海軍有終会、1941年/小板橋良平『小栗上野介一族の悲劇』あさを社。